ミラジーノ
ジーノにまた乗りたい。
すれ違うたび、見かけるたびに思う。
普通免許を取得して、生まれて初めて買った車がミラジーノL700Sだった。
スペックについての詳細はあまり知らないが、FFでNAエンジン、4ドアの軽自動車だ。
なにより、そのスタイルが好きだった。
丸目にイエローのフォグランプ2灯、長いボンネット、低い姿勢。
俺にとってジーノは、クラシックなコンパクトスポーツカーだった。
たったの52馬力だが、車輌重量はわずか700キロ台。昨今の軽自動車がほとんど900キロ前後なので、軽量な部類といえる。
オートマのNAエンジンとはいえ、踏み込めば6500回転まで一気に吹け上がる。
峠のキツいコーナーに進入する少し前にアクセルをゆるめ、進入と同時にアクセルを開くと、ビビるくらいのスピードでグイグイ曲がる。峠道をひらひらと、フラフラと旋回した。
軽さが武器といえば聞こえはいいが、かなりスリリングだった。
旧ミニのパクリと言われるデザインだが、ジーノはミニよりもかなりカッコイイと思っている。
模倣がオリジナルを超えることもある。
1999年発売開始。
俺が所有したのは、初期型だった。
もう製造から20年も経過した車は、エンジンをかければ車体がブルブルと振動した。
燃費も、おそらく12km/1ℓくらいだと思う。
友人を助手席に乗せたとき、「低っ!」と言っていた。
座席の高さはそこそこ低い。
運転席からボンネットが見えるおかげで、かなり見切りがよく、車幅も掴みやすかった。
ジムニーに乗り換えるとき、「ありがとう」と言ってボンネットをぽんぽんと軽く叩いた。少しだけ泣いた。
俺がジジイになったら、また乗りたい。