さよなら、エフ
ニコンFとさよならすることにした。
欠点などない。
言うなれば完全無欠、必要にして十分、質実剛健。
少し重いが、その欠点なんかどうでもよくなるくらい、素晴らしい、世界最高のカメラである。
そのシャッター音は、官能的とすら言える。
普通、カメラのシャッター音は小さい方が良いとされるが、必ずしもそれが正解ではないとも言える。
シャッター音が、撮っていることを意識させ、撮られていることを意識させる。それが、Fというカメラだ。
一生手離すはずなどないと思っていたFを捨て、ライカを手に入れる。
そう、結局、ライカなのだ。
M3かM2か
どちらかにする。
おそらく、M2を選ぶ。
ライカを手にしたからといって、とてつもなく素晴らしい写真が撮れるなんて思っていない。これっぽっちも思っていない。
結局、描写はレンズであり、写真は人間が撮る。
「○○で撮りました」って言わなきゃ分からんし、写真を見る人間にとってはどうでもいいことだ。
超絶性能を誇るレンズを使ったからと言って、いい写真が撮れる訳ではない。
リサイクルショップで買った300円フルオートのコンパクトカメラで、最新スペック狂いや、ライカじじいの老害オナニー写真よりも、良い写真を撮ることだってできる。
写真の良し悪しを決定付けるのは、描写のキレやボケ味やシリアルナンバーではない。
オマエの眼だ。
写真を始めて5年くらい経つのか?
バルナックライカも手離し、ゼニに変える。
ガラクタや、がらくたカメラもゼニに変える。
今現在、俺は金の亡者だ。
エルマーのみ手元に残す。
なぜか。
それはエルマーの逆襲であり、俺からの逆襲だ。
50mm F3.5
強襲と、郷愁と、憤激だ。
エルマーのチカラをフルに発揮させるためにM型にするのである。
バルナック型が帯びるノスタルジーを排除し、徹底的に実用に徹したM型にする。
そろそろ、反撃にかかるのだ。
FとNIKKORからM2とElmarに、武器を持ち替える。
とりあえず、カネだ。