拝啓ブレッソン様
何気ない毎日の中の、何気ない瞬間を、何気なく撮っている。
ある日、気づいたことがある。
我々人間は、いつか必ず人生の最期を迎える。
宇宙の歴史からすると、ほんの一瞬。
いや、ほんの1/1000瞬くらいだろうか。
隣で寝息をたてている妻も、いつか。
そんなの、当たり前だ。
当たり前すぎることなのに、それに気づいて、とても悲しくなった。一緒に過ごす毎日が、当たり前ではないのだと気づいた。
何気なくない毎日。
一瞬一瞬を真剣に生きるなんて到底ムリである。
だが、ふとした瞬間を、真剣に撮ることならばできるかも知れない。
1/500か 1/1000か 1/100秒。
何かが起こる瞬間 起こった瞬間。
それだけが「決定的瞬間」ではない。
理由は分からないけど、
撮ろう 撮りたい 撮らなくちゃ
そう思った瞬間こそが決定的瞬間なのだ。
そうですね?アンリ・カルティエ=ブレッソンさん。
私は、その一瞬を自分のものにしたい。
できることなら、永遠のものにしたい。
自分がこの世を去ったあと、誰かが、私が撮った「一瞬」を見てこう言うかもしれない。
「へ〜、こんな時代があったんだね。同じ人ばかり撮ってる。奥さんかな?なんかよく分かんないけど、いい写真だね。」